スピンドル回転数と加工スピードと工具の関係---回転数が高ければ高級機か ---
◆スピンドルモータの回転数が高いことの功罪
メリット
- 小径穴あけに有利
- 加工スピードがアップする
デメリット
- 使用前に必ずウォーミングアップが必要
- メンテナンスに注意して使わないと動作不良になる
- 芯ぶれが多くなる
- 高価である
◆Prototyping Machineの用途から考えると
大量生産向けと試作向けの用途に応じ、次の点を考慮する必要があります。
試作用小型 基板加工機搭載のスピンドルモータ
一般的にスピンドルモータの多くはボールベアリングを採用しています。
しかし、 ボールベアリングでは高速回転時にどうしても振動、つまり芯ぶれが
起きてしまいます。
小型のスピンドルモータで無理に回転数だけを上げようとすると、
芯ぶれが大きくなり、とても精密加工ができない状態になります。
量産用大型 プリント基板穴あけ機のスピンドルモータ
量産用の大型のプリント基板穴あけ機に搭載しているスピンドルモータの中には
20万回転を超えるような 高性能のスピンドルモータもあります。
そのようなスピンドルモータは、スピンドルの内部構造、ベアリング、コレット、
チャッキング方式など、超高速回転でも芯ぶれが起きないように設計されています。
芯ぶれに大きく関係するのはベアリングですが、オイルベアリングや エアベアリングなどの
流体軸受を採用して芯ぶれを少なくしています。
左の画像:
①が量産型大型、②が卓上型の基板加工機に搭載
されているスピンドルモータの一例です。
スピンドルモータのメンテナンス
特に100,000回転以上のスピンドルモータは使用前に必ず5分間のウォームアップ運転およびコレットの清掃が必要で、それを行わないとトラブルの原因になります。
量産工場においては、専任のメンテナンス要因を配置しているくらいです。
◆工具には最適回転数がある
工具にはツールメーカーが推奨する回転数と加工スピードがあります。
それは工具の種類によって違います。
例えば90°ミリングカッタの場合は、30,000rpmで15mm/secの加工スピード が推奨されています。
これ以上の回転数ですと、加工スピードを上げないと工具の寿命は短くなりますし、加工スピードを
上げると工具が折れやすくなります。
また、工具と被切削材料によっては、最適回転数と最適加工スピードが変わってきます。
このことは東京大学における加工実例でも報告されているように、加工する素材によっては、
むしろ回転数が低い方が高いものより 加工がきれいに仕上がる場合があります。
結論
以上のことから考えると、試作用基板加工機(Prototyping Machine)においては
スピンドル回転数が高ければ価格が高くなりますが、 高価=高級機であるとは言えません。
コストパフォーマンスをよく考えて選定をお願いします。